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ビジョン

高齢者の「選びたい・装いたい・人に見せたい」という衣服への欲求を開放し、生きる意欲を高める

Satisfy elderly’s desire to choose their clothes, enjoy dressing, and see the ones they love with their favorite clothes.

 父が入院中に着たい服を着ることができなかったこと、そして、子としてそれを実現してあげられなかったことに僕は後悔しています。また、介護施設から病院へ環境が移った途端に急速に認知症と老衰が進行した父を見て、環境が人の心、そして、心からくる病に影響を与えているのではないかと感じました。

 そして、入院や看護を経験された多くの方々も、入院着の「選べない」「服がむしろ病気を自覚させる」「人に会いたくなくなる」という点に不満を持っています。

 だから純粋にそういった状況を打破し、入院高齢者の服に対する当たりまえの欲求を開放し、生きる意欲を高めたい。また、僕が経験したように、患者を取り巻く光景がむしろ、家族の大切な人の生を”あきらめさせている” 負の影響を無くしたい。

病院、施設、自宅にある衣生活のバリアを無くし、高齢者がどこでも自分らしくいられる環境を創る

By removing clothing barriers in hospital, care center, and home, make it possible for elderly to be themselves anywhere.

 父の看取り以外にも、僕の心の深淵には入院中の環境に ”強い嫌悪感”を持った原体験があります。それは、私が高校2年生の時。父が精神病棟へ緊急入院した際に見た病室の光景です。当時はまだ精神病患者の尊厳が蔑ろにされていた時代。そこでは、父は薄っぺらい浴衣のような服を着させられ、ベッドのフェンスと手が拘束バンドで固定され、おむつを履かされ、強い薬で深く眠らされていました。彼は一次的に病を患っているだけなのに、なぜここまで人としての尊厳を奪われるのか、僕はその時、悲しみを通り越して、嫌悪感を抱きました。

 医療現場における制約は当然存在します。しかし、服、化粧品、下着、タオル、靴下など、華美でなくとも、その人が当たりまえに心地よいと感じられる衣の環境を、患者の尊厳を守るために、そして、患者の心に安定を与えるために提供したい。

衣服を通じて家族と入院高齢者の心をつなぎ、闘病、介護、死後の日々を互いに後悔ないものにする

By connecting elderly’s and their family’s hearts by clothes, reduce regrets for their elderly care, battle against disease, and terminal care.

 母はなぜ、父が着慣れた服を病院へ届けたいと思ったのでしょうか。そこには単なる合理性だけで語れない、家族の心理があります。衣服は人間が最も長い時間身に着ける本人の好みや想いが反映されるのもの。家族が服を”届ける”という行為には「たとえ、孤独で不安が漂う入院生活であっても、この服を着て、いつもの自分を思い出し、維持して欲しい。前向きな気持ちで一緒に病気と闘おう。」という想いが込められています。

 一方、現在の入院着は、認知症が進行するほど、死に近づくほど、質素になり尊厳が失われます。父へつなぎ服を着せたこと、父の死の直後の最も尊い瞬間をその服で過ごさせてしまったことに僕は強く後悔しています。もし認知症になる前に父から認知症後、死後に着たい服の希望を事前に聞けていたなら、その後悔は無かったはず。

 また、高齢者は入院中の衣服に不満を感じているものの「家族に迷惑をかけている」「叱られる」という心理から不満を家族へ伝えられていないという調査結果もあります。また、子が男性の場合は母の洋服の嗜好を知ることが難しく、特に下着などデリケートな服については考えられない、という切実な声に出会いました。

 だから、高齢者と家族の間にある服に関わるメンタルバリアを解消していきたい。

地域との調和とともに、入院、介護の日々を彩り豊かで開放的なものにし、高齢社会の未来に貢献する

Harmonizing with a local community, change hospitalized and cared lives to be more colorful and cooperative and contribute to aged and aging societies.

 「老老介護」「8050問題」など闘病や介護に伴う問題は、子、配偶者が独りでは抱えきれないほど重く複雑になっています。しかし、家庭のソトの誰かへ認知症や介護の話をすることに対する抵抗感が日本では依然根強い。

 僕の母も父の精神病について親戚内でも明かさず、私に対してショックを与えないよう私が高校2年生まで私へ明かさずにいました。そんな母も今は「病気、介護については、周りに話して助けてもらった方が良い」と言います。それは、母が父の病を私へ明かし、僕がその解決者の一人となることで、母の精神的な負担を他者とシェアできたから。

 家族内、病院内だけでなく、地域と共に闘病・介護の衣生活を彩り、演出することで、閉鎖的でネガティブなテーマをソトへ開放し、家族が抱える精神的•肉体的負担を軽減し、高齢社会の明るい未来の一助となりたい。

(ビジョンの絵、手描きですいません)

2020年1月13日

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